この記事を読んでほしい人
- 土砂災害ってそもそも何?と思っている人
- 会社の危機管理・BCP担当の人
土砂災害は日本でよく起こっている
最近「台風がよく来るから土砂災害に気を付けろ」とか言われます。でも我々には関係ないですよね?
そんなことはありません!日本は土砂災害が起こりやすい土地柄なので、しっかりと注意していないと、多くの死傷者を出す事態に発展するリスクがあります。
ええ!そうなんですか?でもよく分からないです・・・
大丈夫です!今回は土砂災害を分かりやすく説明します!
土砂災害は毎年発生している
近年、数年おきに大雨による大規模な土砂災害被害が発生しています。
なので普通のビジネスマンや主婦の方の頭の中にも「土砂災害は気をつけなければ」「大雨には注意しよう」という考え方が生まれ始めています。しっかりと災害の備えをすることは素晴らしいことだと思います。
ただ、間違ってはいけないことがあります。
土砂災害は毎年発生している、ということです。
次のグラフを見て下さい。
これは国土交通省が2020年に発表したここ約40年の土砂災害の発生件数です。
グラフをよく見ると、土砂災害は毎年500件以上発生しているということです。100件以下になることはほとんどありません。となると、土砂災害は365日、毎日1件以上発生しているということです。
地震や津波と違って、意外と土砂災害は身近な災害だということが分かります。
また、グラフの中に、上から矢印のマークがある年があります。これは大規模な災害が発生した年をあらわしています。
土砂災害は一部の地域で起こりやすい
土砂災害は地方で多い
東京や大阪に住んでいると、土砂災害という言葉をあまり聞きません。
実は都会の方が、土砂災害のリスクにはさらされにくいのです。土砂災害は山や谷で発生しやすいのだから、よく考えれば当たり前です。都会よりも地方の方が土砂災害の被害にあいやすいのです。
土砂災害の多い都道府県ランキング
国土交通省は、被害の多い都道府県ランキングを発表しています。
これは、2004年から2019年までの集計値です。
最も土砂災害の被害にあいやすいのが「広島県」です。そのあと、愛媛県、北海道、山口県、高知県と続きます。
中国・四国地方がリスクが高いのだと分かりますね。5位以下に続くのは九州地方です。福岡県、宮崎県、長崎県、鹿児島県あたりもリスクが高い地域だと言えます。
土砂災害の基礎用語
意外と「土砂災害とは何か」のイメージをつかめていない人が多いです。
そういった方のために、改めて土砂災害に関係する基礎用語をおさらいしておきましょう。
「土砂災害」とは
土砂災害という言葉自体があいまいです。まずはここから理解しましょう。
土砂災害の定義は下記です。
- 土石流
- 地滑り
- がけ崩れ(=急傾斜地崩壊)
まずはこの3種類の土砂災害について理解を深めていきましょう。
「土石流」とは
土石流の定義は下記です。
土石流は破壊力が大きく、またスピードも速い(時速20~40kn)ので、人家や畑に流れ出てきた場合、大きな被害をもたらします。
災害発生時の俯瞰図をイメージすると分かりやすいです、一気に発生します。
「地すべり」とは
地すべりの定義は下記です。
地すべりは、斜面の一部や全部が、地下水の影響と重力によってゆっくりと斜面下方に移動する現象のことです。
移動する地面の量が大きいため甚大な被害を及ぼします。また、一度地面が動き出すとこれを完全に停止させることは困難です。 日本では、地質的に脆弱であることに加えて、梅雨や台風などの豪雨によって毎年各地で地すべりが発生しています。
災害発生時の俯瞰図をイメージすると分かりやすいです、広範囲に発生します。
「がけ崩れ(急傾斜地崩壊)」とは
がけ崩れの定義は下記です。
また、下記のような山を見かけませんか?
上記のようなものは、がけ崩れを防止するための「急傾斜地崩壊対策事業(がけ崩れ対策)」と呼ばれるものです。法枠(のりわく)工事やアンカー工事などの崩壊防止工事を行っています。災害のリスクが認められる場合、都道府県が主体となって工事を行います。
土砂災害はなぜ発生するのか
なぜ日本ではこういった土砂災害が多く発生するのでしょうか?
日本で土砂災害が発生しやすい理由3つ
日本で土砂災害が発生しやすい理由は3つあります。
- 雨や雪が多い
- 山地が多く地質がもろい
- 地震や火山が多い
日本列島の地形や地質・気象などの自然条件が、土砂災害の多さの原因になっています。そして、日本は土地自体が狭く、土砂災害の起こりやすい場所にも多くの人が住んでいるため、土砂災害で大きな被害が出る原因になっています。
理由1:雨や雪が多い
土砂災害を引き起こす大きな原因の1つは雨と雪です。
日本は世界でも特に雨が多い国です。日本の年間平均雨量は約1700ミリ、一方で世界の平均は約970ミリであり、土地に降る雨量に倍近くの差があります。
しかも、日本の雨は、1年を通じて平均して降るのではなく、梅雨や台風という形で、まとまって大量に降るという特徴があります。まとまって雨が降ると、土地が緩むため、土砂災害が発生しやすくなります。日本には毎年10個程度の台風が来るため、その分リスクが高まっています。
最近では特に数日間で集中的に降る「集中豪雨」が頻繁に発生しています。
また、北海道等では豪雪と呼ばれるように、雪が降る量も相当多いです。これも土砂災害を引き起こす原因になります。
理由2:山地が多く地質がもろい
日本は山地の地質がとても弱いので、土砂災害の原因になっています。
地図帳で、日本列島全体がのっているページを開いてみてください。山や丘は茶色や黄色、平地は黄緑色で表してありますが、黄緑色の部分はとても少ないことに気づくと思います。
日本列島は、面積の約70パーセントが山や丘です。それも高くてけわしい山が多いという特色があります。しかも日本の山の多くは、くずれやすい地質でできているため、川の水でけずられたり、雨や風でくずれたりしやすいのです。
更に、山が険しいと川の傾きがきつくなります。川のかたむきがきつくなるほど水の流れは速くなり、流れが速いほど、川底や岸の土をけずる力も強くなります。山からけずりとられた土が下流に運ばれ、川底に積もると、洪水や土砂災害の原因になります。
理由3:地震や火山が多い
土砂災害が発生する大きな理由は「大雨」ですが、実は「地震」と「火山の噴火」も土砂災害を引き起こす大きなきっかけになっています。
日本は震度1以上の地震が毎年1,500回以上発生していると言われています。特に強い地震である震度4以上の地震に絞っても年間40回以上起こっています。
土砂災害は水で緩んだ土地がぐらつくことで発生するため、地震によって連鎖的に土砂災害も発生しやすくなります。
また、同様に地震を引き起こす火山活動も土砂災害の引き金となります。日本の活火山は約110個あり、世界中の7%の活火山が日本にあると言われています。リスクがかなり高いのです。
まとめ
いかがでしたか?
- 土砂災害は3種類ある(土石流、地すべり、がけ崩れ)
- 日本は土砂災害が起こりやすい土地柄
- 特に土砂災害が起こりやすいのは、北海道と中国・四国地方
今回はこの3つを覚えてもらえればと思います。
次に、ハザードマップの読み方の基礎である「土砂災害の歴史」について学びましょう。