こんな人に見てほしい
- 精子提供を受けたい女性(ドニー)
- 精子提供をしたい男性(ドナー)
精子提供とは
最近、SNSなどを通じて「精子提供」が広がっています。
精子提供(せいしていきょう)とは、男性が有償もしくは無償で自身の精液を提供すること。特に不妊に悩む夫婦が第三者の精子をもらって子供を作るための方法として知られています。
通常、精子バンク等の機関を通じて精子をもらいますが、最近広がっている精子提供はマッチングサイトなどのSNSを使った精子のやりとりです。上手くいくことも多いですが危険も多く、間違った進め方をすると災害級のトラブルになる可能性もあるということで、今回、防災ライフの記事として取り上げます。
今回の対象は「SNSを使った精子提供」です。
精子提供を行う側の男性のことを「ドナー(Donor)」と呼びます。精子提供を受ける方のことは「ドニー(Donee)」と呼びます。
ドニーは「レシピエント(Recipient)」と呼ばれることもあります。厳密には子供を産む女性のみをドニーと呼びますが、子供を産む女性とそのパートナーの両方をドニーと表現する場合があります。
また、精子の提供方法は2種類あり、精子を容器に入れてシリンジで母体に注入する「シリンジ法」と、直接性行為を行って受精させる「タイミング法」です。シリンジ法が推奨されています。
精子提供は上手く使えばいい方法ですが、トラブルリスクが大きいことをしっかりと理解してから使いましょう。
精子提供のリスク
精子提供を安易に行うことには危険がつきまといます。リスクある行為だということをしっかりと理解して下さい。
ドニーとドナーの両方ともにリスクがあるのでまとめました。基本的には「提供するとき」「子供が生まれる前後」「子供を育てていくとき」の3つのタイミングでリスクがあります。まずはこのリスクを理解しましょう。
提供を受ける側(ドニー)のリスク
精子提供を受ける方、もしくは精子提供を受ける配偶者の女性には、下記のようなリスクがあります。
- 希望しない精子を受けとる可能性がある
- 男性が認知を強く希望してくる場合がある
- タイミング法(性行為)を要請してくる場合がある
特に希望しない精子を受けるトラブルはよくあります。子供を産むときにトラブルになりやすいのが、遺伝子疾患や感染症です。特に性感染症は出産の弊害になるためチェックすべきです。また、マッチングサイト上では無理に性行為を希望してくる男性もいるため要注意です。
上記は女性だけの画像を出していますが、FtMなどのパートナーと一緒にコンタクトしてくる場合もあります。ドニーは複数いる場合があるということです。
提供する側(ドナー)のリスク
精子提供を行う側も危険はつきまといます。
- 損害賠償を負うリスク
- 認知や養育費を強要されるリスク
- 性行為によって感染症をうつされるリスク
実は精子提供においては女性側(ドニー)よりも男性側(ドナー)の方が抱えるリスクが大きいです。それをしっかりと理解しましょう。
男性側は子供ができればいい、産んだ後は勝手に育ててくれる…と気軽に思っているかもしれません。実は非常に重たい決断です。希望する子供が産めなかった場合、損害賠償されるリスクがあります。子供が埋めても、養育費を払ったり認知を迫られるリスクがあります。安易に決めない方が良いでしょう。
精子提供に関するSNS
精子提供に関するSNSはいくつかありますが、多くはありません。基本的には「マッチングサイト」「個人サイト」の2種類です。病院・精子バンクなどと比較すると4種類方法があることになります。今回はSNS(マッチングサイトと個人サイト)を紹介します。
精子提供マッチングサイト
精子提供のマッチングサイトの大手は2つあります。
Ton Bebe(トンベベ)
一番有名なマッチングサイトはこのTon Bebe(トンベベ)だと思います。一時期ニュースでも有名になりました。2021年時点では稼働しており、登録メンバーは5,000人を超えているようです。
代表者の柿本さんという男性と、あきんぼうさんという女性が連携して運営されています。関連ブログを作成しており、安全な精子提供を推奨しています。登録時は無料ですが、ドナーは精子検査をした後の登録・承認に1回3,000円かかります。精子検査しなくてもいいですがした方がドニーからの信頼は上がるという仕組みです。ドニーは未検査のドナーにはコンタクトしない方が良いでしょう。ドナーの提供実績や詳細なプロフィールが見える一方、ドニー側の情報は守秘されるため、ドニー側に有利なシステムになっているため信頼できます。サクラ(登録者を釣り上げるための偽物のドニー)もあまりいないようですが、悪質なドナー・ドニーには気をつけましょう。
ベイビープラチナパートナー
もう一つの大手サイトがこのベイビープラチナパートナーです。こちらも2021年時点で稼働しています。ドナー数は数百名程度だと思われます。具体的な運営者は明かされておらず、システムのみが稼働しています。
登録時にドナーは3万円の費用を取られます。また、ドニー側は提供時にドナーに1万円程度の謝礼を払うことが推奨されています。精子提供に軽い気持ちを持っている人は入りにくいシステムです。また、ドニー側の有利な点として、このサイトはドナーの顔写真をできるだけ載せるように推奨しているため、どういう風貌のドナーなのか、コンタクト前に分かりやすいです。ただイラストを載せているドナーもいます。
精子提供個人サイト
ブログ村などで「精子提供」と検索すると、個人の精子提供ブログが大量に出てきます。ただ、これらの個人ブログは推奨しません。
なぜなら、こういった個人ブログは、タイミング法(性行為)を目的にして近づいてくる方が特に多く含まれており、広くチェックしにくいため、いきなり会うことになってそのままズルズルとコミュニケーションしてしまいがちだからです。利用するときも、十分に比較してからコンタクトすることをおすすめします。
精子提供の注意点7つ
精子提供にあたって注意することは7つあります。確実にこれだけは気をつけましょう。ドニーもドナーも両方とも気にすべき共通の事項を説明しています。
- 訴訟リスクを理解する
- 同意書・契約書を作成する
- 希望イメージを作っておく
- マッチングは焦らない
- 基本はシリンジ法
- 会う前に電話会議する
- 提供場所・運用を決めておく
それぞれ説明していきます。
1. 訴訟リスクを理解する
最初に説明した通り、SNS経由での精子提供はドニー・ドナーの両方に訴訟リスクが発生します。ケースとしては下記のようなものです。
ドニー(女性)のリスクとしていくつかありますが、一番大きいのは「認知リスク」です。
精子提供した後、男性が自分の子供にしたいと言い出して、ドニー(女性とそのパートナー)に対して認知させてくれと言い出すものです。
ドニーとしてはせっかく精子提供で産んで育てている子供を奪われてしまうことになります。そもそもの目的が邪魔されてしまいます。近いものとして「月に1回は会わせてくれ」など面会希望をするドナーもいますが、これは最終的に認知にエスカレートすることがあるため危険な兆候です。
ドナー(男性)のリスクも幾つかありますが、大きいのは「損害賠償リスク」「認知リスク」です。男性の方が女性より大きな訴訟リスクを負っています。
精子提供をして子供が生まれるまでは良かったですが、気に入らない顔や体質であったり、万が一の遺伝子疾患などがあった場合、損害賠償に発展することもあります。養育費や病院の費用まで含められると、何千万円といった超高額になります。「ちょっと精子提供してみたかった」では済まされない金額です。
また、女性側の気持ちが変わったり、離婚したりして「状況が変わったのであなたに認知してほしい・・・」という申し出がくることがあります。これはかなり強い要望です。法的にもかなり強いため男性側は万が一のケースに備えておく必要があります。
ただ、訴訟リスクは少しだけ軽減することができます。それが同意書・契約書です。
2. 同意書・契約書を作成する
Word1枚に、認知について、訴訟について、費用についてなどの各条項を盛り込んで互いに1枚ずつ持っておいて契約するのです。実名で住所ありで契約する方がよいですが、実名住所なしでも、相手に「認知はしない」「養育費は払わない」「生まれた子は渡さない」と牽制(けんせい)する効果はあるでしょう。
個人で作成しても牽制にはなりますが、できるだけ弁護士に依頼して作成するようにしましょう。現代だとネットで相談することもできます。
ココナラなど今では便利なサービスもあります。
ただし、あくまでも「軽減」であって、契約でリスクをゼロにすることは難しいです。特に複雑に法律が絡み合うため、訴訟リスクをできるだけ軽減したい場合は、素人が契約書作成せず、しっかりと弁護士に相談しましょう。
3. 希望イメージを作っておく
マッチングする際には、相手のイメージを作っておきましょう。
例えば上記のようなイメージです。イメージを持っておかないと、相手から質問があった時にやりとりしにくいです。自分が受け入れられそうか判断できるからです。
色々なケースを考えておきましょう。いきなり行為を迫られたりする可能性もあります。
悪意ある人には気をつけましょう。画像は悪意あるドナー(男性側)をイメージしていますが、男女関わらずトラブルを引き起こす人は存在します。気をつけすぎて困ることはありません。
4. マッチングは焦らない
ただ、自分の理想形にこだわらないようにしましょう。無理にこだわると、「条件にはマッチしているが変な人」とマッチしてしまう可能性があります。
女性は希望を高くしすぎないように注意
ドニーは希望を高くしすぎないように注意しましょう。
精子提供でよくあるのが「高学歴の遺伝子が欲しい」という希望ですが、実はそれよりも感染症などをしっかりとチェックした方がいいです。
例えば、「東京大学卒業している人の精子でないと嫌だ」といった希望です。そういったむちゃな希望をしていると、東京大学卒業だが性行為を強要してくる50代男性がマッチしてしまったりします。また認知を求めてくるような方とマッチしてしまいます。経歴はあまり理想論を語らず、ある程度、妥協しても良いラインを決めておくといいでしょう。国公立大学や有名私立大学程度に抑えておくのが無難です。会社も「大企業勤めがいい!」とかいいだすと可能性を狭めてしまいます。
また、イケメン度合を求める人も多いです。二重は絶対という人もいますが、ある程度許容範囲にしておかないと、ヤリ目的のイケメン男性とつながって性感染症に罹患して訴訟になる・・・といった最悪のケースもありえます。要注意です。
特に夫婦で精子提供を進めているドニーは、パートナーと「こっちの方がイケメンだ」「こっちはちょっとブサイクかも」とか、色々と二人で細かな容姿条件を考えがちですが、極めて失礼な対応です。もちろん重要な事項ですが、それよりも既往症であったり性感染症、認知リスクなど、子供を産むときに必須の情報を得ていくようにしましょう。
ただ、経歴を偽ってくる人は気をつけましょう。身長や体重、血液型などでウソをついている場合、経歴や嗜好もウソをついている可能性があります。気をつけましょう。
男性は焦らないように注意
ドナー側(男性)も焦らないようにしましょう。
一番多いのが「誰からも連絡こない」という悩みです。
当たり前ですがドナー側は”若い男性”の方が人気があります。具体的には25歳~35歳が一番の精子提供のメインゾーンになってきます。比較的見た目も老けておらずイケメンに見えますし、精子も劣化していないケースが多いためです。
もちろん、35歳~45歳もマッチします。30-40代のドナーの方がトラブルリスクが低いからです。金銭的にも裕福で家庭を持っていて余裕がある男性も多く、認知を強要してきたりしにくいからです。社会的地位が高いドナーは特に個人情報の守秘や対応もしっかりしています。最近は精子検査があるので、精子検査結果が良好であれば、30代後半や40代初の男性の方がむしろ優良物件です。
ただ、太っている人はマッチしにくいです。女性はBMIをかなり気にしてみてきます。既往症などのリスクが高いためドニーに敬遠されます。しっかりとボディメイクし痩せましょう。
数か月全く連絡がないというのも普通です。「1回でもマッチすれば感謝」くらいの気持ちでいるのがいいでしょう。提供まで行くケースは稀です。
また、ドナーがマッチするためには精子検査や性感染症検査をしておいた方がマッチング率が高まります。おすすめとしては「プレグナクト」という一番有名な精子検査キットです。
5. 基本はシリンジ法
精子提供の方法はシリンジ法とタイミング法の2つありますが、可能な限り、シリンジ法を選択しましょう。
大きなリスクである、性感染症を軽減することが一番の目的ですが、性行為によって関係を続けてしまったり、訴訟トラブルになるリスクを減らすためでもあります。
ドニー側(女性)からいきなり「タイミング法でいいですよ」「ホテルにしましょう」と言ってきた場合、ドナー側(男性)は危険を察知しましょう。通常、タイミング法にする場合でも、ドニーは悩んだ上で決めます。向こうが何かしら悪意を持っている可能性があります。
よく使われているシリンジは下記「Meeta(ミータ)」です。
Meeta(ミータ)
6. 会う前に電話会議する
可能な限り、会う前に電話会議しましょう。電話会議だと、相手の顔が見えます。ドナーにとってもドニーにとっても相手が何者か分かりやすいので、一度は実施しておく必要があると思います。
LINEだと電話番号やメールアドレスがバレるのでおすすめしません。Zoomだと相手に個人情報がばれにくいのでおすすめです。捨てアドレスを使ってZoom登録をして一時チャットルームを作り、相手とやりとりしあうのが一番いいです。
メールでは聞きにくい、気になることを聞いてみましょう。
- 認知の希望
- 養育費の希望
- 所在地と落ち合う場所
- 謝礼
- 精子提供に至った理由(細かく聞くと失礼なので気になった場合に留めましょう)
お互い顔出しはしておくべきでしょう。顔出しできないという人は「危ない人」「何かひけめがある人」「確実に個人情報をさらしたくない人」です。個人情報をさらしたくない女性等はよくいますが、ドナー側で個人情報をさらしたくない男性は太った人などのケースが多いです。
ドニーにとって「謝礼」は悩ましいところです。謝礼金額によってドナーの質を峻別できないからです。謝礼不要でもまともなドナーもかなり多いですし、高額にぼったくってきつつ性行為を強制してくるような悪質なドナーもいます。ただ、共通して言えるのが、無料でも有償でも、まともな人はメールのやりとりがしっかりしています。こちらが嫌だと言ったら強制しない人が優良なドナーです。必要だと思ったら払いましょう。
7. 提供場所・運用を決めておく
最後に、重要なのは提供場所や運用を決めることです。
あまり事前に色々話したくない、住所バレにもなる・・・と思う人も多いですが、先に決めておかないとかなりやりとりが増え、逆に情報漏えいのリスクが高まります。
ドナーもドニーも両方理解した方が良いのが「排卵日は頻繁に変わるため、固定的に日程を決めにくい」です。いきなり日程が変わってもお互い怒らないことです。
最初は大まかに「4月の第三週目で」と決めておき、そのあとで4月に入ってから「4月15日でよろしくおねがいします」とコミュニケーションしていった方が良いです。また、直前になって排卵してしまったから次の月で・・・というコミュニケーションはよくあります。むしろ半年や1年の長丁場になることが普通です。
逆に、運用や日程を決めない人は危ない人が多いです。直前に色々押し付けてくるヤリ目的の人だったり、サクラのドニーの可能性もあります。その場所に行っても人がいなかった、ということもあります。
精子提供の当日は?
当日は相手によって変わります。一番多いのが、当日に契約書を交わしつつ、精子提供を行う方法です。その次に多いのが、契約書を交わさないので、当日も精子だけを渡して、顔をできるだけみせないようにしてすぐ帰るパターンです。まとめると下記のような形です。
タイミング法は推奨していないため、上記は全てシリンジ法になります。
また、精子採取の際には清潔なクリーム入れがおすすめです。ドニーは必ず買っておきましょう。一度採取したものは日が持ちません。保温が重要で、30℃以下や40℃以上になると弱ってしまいます。ランチ系の保冷バッグにシリンジと一緒に入れて渡すなどしましょう。
最後に
マッチングサービスなどを使った精子提供は、使い方によっては子供を産む選択肢になりますが、使い方を間違えると災害級のトラブルになってしまうため。ドニーもドナーもしっかりと考えてから進めるべきです。自己判断も重要ですが、迷ったら、困ったら、医師や弁護士などに相談しましょう。
ドニーも、ドナーもお互いに敬意を持ちましょう。