この記事を読んでほしい人
- 土砂災害の基本をしっかりと理解したい人
- 会社の危機管理・BCP担当の人
土砂災害の歴史を知るとハザードマップが読める
土砂災害に歴史なんてあるんですか?
あります!土砂災害の歴史が分かると、ハザードマップが読めるようになります。ハザードマップが読めるようになると、生き延びる確率を高めることができます。
日本の歴史と土砂災害の歴史
日本の歴史は、土砂災害の歴史といって過言ではありません。
日本は雨が降りやすく、山が多く、地盤も弱いという特徴があります。土砂災害が極めて発生しやすい国だとういうことです。
そこで、村が町に、町が都市になるにつれ、治水や土砂災害対策は必須になりました。
これは大きな災害や土砂災害に関する法律が制定された歴史年表です。
これを見ると、天武天皇の時代、西暦600年代から平成まで、約1,400年もの間、ずっと続いてきたことが分かります。
小さな土砂災害は数年おきに、大きな土砂災害は数十年サイクルで発生していることが分かりますね。
前回まとめた通り、土砂災害には大きく3種類ありました。土石流、地すべり、がけ崩れの3つです。こういった対策を少しずつ、少しずつ対策してきたのが今の日本です。
土砂災害の歴史
土砂災害に関する3つの法律
土砂災害の歴史を知るためには、この3つの法律に沿って学ぶと分かりやすいです。
- 砂防法(明治30年)
- 建設省通達(昭和41年)
- 土砂災害防止法(平成13年)
① 砂防法(明治30年)
まず、明治30年(1897年)に砂防法(さぼうほう)という法律が施行されました。
明治23年に大日本国憲法が制定され、日本がようやく国家として一つにまとまってきたところでしたが、山林の整備と治水は貧弱でした。そこで日本政府は「治水三法」と呼ばれる法律の制定を進めました。
その三法の一つが、この砂防法です。
明治時代の日本は貧乏だったため、土砂災害や水害を完全に防止するために投入するお金もマンパワーもありませんでした。
そのため、まず日本政府はハード面の充実(堤防等の整備)と区域内の一定の行為制限ルール(土砂災害などを招く掘削や伐採の禁止)を整備するために、まず砂防法が整備され、各市区町村ごとに整備が進められることになりました。
② 建設省通達(昭和41年)
砂防法の施工から約70年が経過し、終戦後、少しずつ土砂災害リスクの対策が始められました。ただ、法律を改正したり制定したりはせず、昭和41年(1966年)に「通達」という形で建設省(今の国土交通省)から都道府県に指示が発信されました。
建設省の指示内容は、3種類の「土砂災害危険個所」を把握し、周知せよというものでした。これが今のハザードマップの基礎になっています。
この昭和の時代に、「土石流」「地滑り」「がけ崩れ」の3つの危険個所が指定されてました。
この背景として、その当時から大雨による土砂災害が目立つようになってきたことから、土地利用等の社会的変化や土砂災害の実態把握のために危険箇所を周知するよう国が動いたからだと言われています。
ここでようやく、今の三大土砂災害である「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」が脅威として分類・定義されました。
③ 土砂災害防止法(平成13年)
建設省の通達から更に50年程度が経過し、平成13年(2001年)に土砂災害防止法が施行されました。
これが今の土砂災害ハザードマップの基本になっています。正式名称を「土砂災害警戒区域等における土砂災害対策の推進に関する法律」と言います。
平成11年(1999年)の6月29日に、広島で「6.29豪雨災害」と呼ばれる39人の死者を出す大災害が発生しました。昭和の宅地開発によって土砂災害危険個所は年々増加しており、改めてルールを整理する必要が出てきたことから、法律が整備されました。
「土砂災害危険個所」とは
土砂災害には3種類あることが分かりましたが、この災害の種類に合わせて、ハザードマップ上も土砂災害危険個所も3種類あります。
- 土石流危険渓流
- 地すべり危険箇所
- 急傾斜地崩壊危険箇所
これら3つを総称して「土砂災害危険箇所」と呼んでいます。
土砂災害危険箇所は、土砂災害による被害のおそれのある箇所について、危険箇所の周知や警戒避難体制の整備に資することを目的として調査した結果です。
「土砂災害警戒区域」とは?
土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域のことを、土砂災害警戒区域と言います。
これら「警戒区域」は、土砂災害防止法で定められている新しい情報です。
いわば、最新版の法令に基づいて区分けされた情報だと言えます。この区域には2種類の区域があります。「警戒区域(イエローゾーン)」と、「特別警戒区域(レッドゾーン)」の2種類です。
- 土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)
- 土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)
この区域をベースに、ハザードマップは2種類の色分けがされました。
イエローゾーンは、「土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」と定義されています。
レッドゾーンは、「土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域」と定義されています。
まとめ
ざっくりと土砂災害の危険地域を見分けたいなら、自分が見たい地域が「イエローゾーン」や「レッドゾーン」の中に入っていないかどうかを、ハザードマップでチェックすることをおすすめします。
そしてもし、更に細かい情報を知りたい場合は、「危険個所」の情報をチェックするようにしましょう。
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