この記事を読んでほしい人
- 火山の噴火が怖い人
- 噴火の仕組みを勉強して備えたい人
火山の噴火は日本の日常
2019年4月16日に阿蘇山が噴火しました。では今すぐ日本滅亡か?と言われれば、それは「NO」です。噴火によって簡単に日本がやられるものではありません。
日本は「火山大国」だということを改めて認識しましょう。
鹿児島など、火山の近くに住む人たちにとっては「常識」ですが、噴火は日本の日常風景です。噴火が起こったからすぐ皆死ぬということはありません。
当然、警戒すべきではありますが、警戒レベルと対策をしっかりと認識しておけば、あわてふためく必要はないということです。
今回は、噴火に関する基本的な知識と、噴火の警戒レベルについて分かりやすく説明します。
噴火の種類
噴火には大きく3つの種類があります。
- マグマ噴火
- 水蒸気噴火
- マグマ水蒸気噴火
普通の人が「噴火」というワードを聞いて一番イメージしやすいのが「マグマ噴火」だと思います。火山の中に溜まっているマグマ(溶岩)が、地表を突き抜けて噴出することです。一番多いタイプの噴火です。マグマ噴火の中にも細かく種類やレベルが区分されていますが、今回は割愛します。
もう一つが「水蒸気噴火」です。火山の中に溜まっている水が、マグマに熱せられて大爆発を起こすタイプの噴火です。この場合、溶岩や火山灰はほとんど噴出せず、水蒸気・煙が放出されます。
最後が、両方が起こる「マグマ水蒸気噴火」です。この場合、マグマを含む火山灰と水蒸気が同時に放出されることになります。
代表的な3つの噴火以外にも、地震によって火山自体が大崩壊する「山体崩壊」という現象があります。崩壊した山は大量の土石流となって麓に向かって一気に流れ落ちます。更に川の水をせき止め、洪水を引き起こすケースもあります。日本では2300年前に富士山の東斜面で山体崩壊が起こっています。
噴火の仕組みと原因
そもそも、火山の噴火ってどういう仕組みで起こるのでしょうか?
世界の火山は、プレート(岩盤)の中や境界線にまばらに分布しています。これをホットスポットと言います。
プレートには陸のプレートと海のプレートに分かれていて、海のプレートは陸のプレートの下に沈み込んでいきます。この海のプレートから水の働きによってマグマが浮き上がって、陸のプレートに溜まっていきます。これが噴火やマグマ移動の原動力になっています。
基本的にはこのように、地殻内部の動きでマグマが少しずつ溜まっていって、最終的に噴火するという動きになっています。
なので、プレートやマグマの動きが分かっていれば、あとは既定路線になります。あと何十年で噴火するかもしれないということが読めるということです。噴火は定期的に必ず発生するということです。ただ、発生サイクルが100年以上のスパンなので、人間にはかなり長い歴史のように感じられるということです。
噴火は予測・予知できるのか?
結論、火山の噴火は予測できます。
地震と違って、噴火は突発的なものではなく前兆を観測しやすいため、予測することが可能である。それが政府の公式見解です。正式には「噴火予知」と言います。
ただし、当たり前の話ですが「100%の予知」はできないという前提つきです。例えば、マグマの噴出を伴わない「水蒸気噴火」は、マグマの動きを観測しているだけだと予測が特に困難だと言われています。
また、予測・予知ができるから安心!というわけでもありません。予測の根拠となる前兆現象の発生から噴火の間まで数時間しかなく、防災行動が間に合わないという事態も考えられるからです。
噴火の「前兆」は?
噴火が予測できるということは、日本政府等は「噴火の前兆」を捉えているということです。
前兆となる現象は沢山ありますが、大きく分けると3つです。
- 火山性地震
- 火山性微動
- その他の変化
一つ一つ、解説していきますね。
(1)火山性地震
地震の中でも火山周辺で起きる特殊な地震のことを「火山性地震」と呼んでいます。
普通の地震は地殻内部の岩石がゆがんでエネルギーが蓄積され、そのゆがみを解消しようとする反動で急激に揺れる現象です。これに対して「火山性地震」は、火山周辺を通るマグマの影響等の火山活動が原因で起こる地震です。
普通の地震は本震・前震・余震という形で複数回の揺れが起こりますが、火山性地震は通常1回きりで終わります。そして、その震度も1レベルであり、体感しない小さいレベルの揺れになります。明確にマグマの動きが分かるため、前兆の1つとして考えられています。
(2)火山性微動
また、「火山性微動」という前兆現象があります。
「噴火が近いことを明確に示すサイン」として理解されています。小さい揺れが長期間継続する現象です。短いもので数十秒~数分、長いものだと数日続きます。同じ揺れではあるものの、揺れのタイプが違うことから火山性地震とは明確に区別されています。
発生する理由も様々で、マグマ溜まりで発生する気泡、火山ガスの動き、地下水から水蒸気が出てくることなどの複数要因が考えられています。
火山性地震も火山性微動も、普通の地震と決定的に違うのが「周波数」です。普通の地震は10~20ヘルツの周波数で揺れますが、火山性地震・火山性微動は1~2ヘルツの周波数で揺れます。低周波地震が起こると噴火の前兆だということです。
(3)その他の変化
その他の変化も沢山種類がありますが、噴火の決定的な前兆かと言われると、判断しにくいところがあります。下記のような例があります。
- 地形変化(山が急激に隆起する、地割れが起きる等)
- 電磁気学的変化(地磁気が乱れる、地中の電気抵抗が変わる等)
- 熱の異常(地下水の温度が上昇する等)
- 火山ガスの変化(組成や量が変わる等)
こういった変化の背景には、噴火に繋がるマグマの移動等が関係しているものだということは想像できますが、「昨日、山の湖の水が引いたからすぐ噴火だ!」ということを断定することはできません。
「危険な火山」は日本にいくつある?
そもそも、日本に危険な火山はいくつあるのでしょうか?
かつては学校の授業で「活火山」「死火山」「休火山」がある、と習った人が多いと思います。今も噴火している火山が活火山、千年以上活動を停止している火山が死火山、停止しているがまた動き出す可能性のある火山が休火山という定義です。
しかし、現在では休火山・死火山という用語は使われなくなってきています。かなり長い間活動を止めていて、死火山だと思われていた火山がまた動き出すケースが多く見受けられたためです。
現在では火山の寿命は1万年程度だと言われています。この新たな定義に基づいて、日本では火山予知連絡会が2009年に日本の火山の数を再定義しました。
火山予知連絡会は「今後100年程度の中長期的な噴火の可能性及び社会的影響を踏まえ、火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山」、すなわち「常時観測すべき危険な火山」として50火山を選定しました。
具体的には、日本にある名前の付いた「山の数」は15,000個あります。その中で「火山の数」は111個あり、更にその中で「危険な火山」の数は50火山だということです。
噴火リスクが高いのはどの都道府県?
国立情報学研究所(NII)の北本朝展先生が「日本全国の活火山マップ」を作っています。これが日本一わかりやすいと思います。
日本すべての活火山の場所と、その警戒レベルが分かります。このマップをみるとすぐわかりますが、活火山が多いリスクエリアは「九州(鹿児島、熊本、大分)」「関東近隣(静岡、山梨)」「日本海側(富山、新潟、秋田、青森」あたりに点在していることが分かります。
個人も企業もこの情報をベースにすると危機を常時チェックできます。
噴火の警戒レベルは?
噴火のレベルによりますが、通常のマグマ噴火であれば火口周辺だけがリスク対象となるため、日本全土が危険にさらされることはありません。もちろん、火山周辺に来ている旅行客や、火山の麓に住んでいる住民にはリスクがあります。
2005年に気象庁は「噴火警戒レベル」を導入しました。
噴火警戒レベルは5つあります。
- レベル1:活火山であることに留意
- レベル2:火口周辺規制
- レベル3:入山規制
- レベル4:避難準備
- レベル5:避難
気象庁が出している特別警報基準でいうと、地震で言うところの「震度6弱以上」が、噴火で言う「レベル4以上」です。
正直、ちょっとした噴火だとレベル2以下に分類されます。個人や一般企業は「レベル3」以上になったら「そろそろ対策考え始めようか、ニュースを毎日チェックしておこう」と感じるレベルでいいと思います。
検討すべき噴火シナリオ
普通の火山噴火はある程度予測がつくし、対策もできるということが分かってきました。ただ、皆さんのイメージでは「いや、噴火はもっと怖いもの」というイメージがありませんか?その気持ちも分かります。
個人的には「影響度」という意味で例外ケース(大規模な影響が起こるケース)が2つあると思います。
1つ目は「富士山の噴火」です。富士山は静岡や東京等、経済圏のすぐ近くにあるため、火山灰等の影響で経済ダメージがかなりあると想定されます。富士山噴火の可能性は低くないと日本政府も考えているようです。先日、また富士山噴火の影響度合を日本政府は調査・発表しています。
中規模レベルの噴火でも、富士山が噴火すると人や経済へのダメージが大きいということです。もし個人や企業が防災対策を行うのであれば、想定シナリオは「富士山噴火」にすべきだと思います。
2つ目は「破局噴火」です。日本全土に火山灰をまきちらし、下手をすると溶岩が大量に流出するレベルの破局噴火は、地震以上のダメージを人類に与えると思います。
ただし、神戸大学の火山研究チームは2014年に「カルデラを形成するレベルの巨大噴火が日本列島でこの100年間で起きる確率は約1%である」と発表しています。この30年で90%発生すると言われている大地震と比べると、破局噴火の発生確率は低いと言えます。
噴火の何が怖いのか
噴火の「怖さ」は、発生時にいる場所によります。
火山の近隣にいるのであれば、一番怖いのは「マグマ・岩石飛来」です。溶岩流出に巻き込まれると即死亡です。山を登ったりするときにはこのリスクを常に考えておく必要があります。もちろん、避難ルートは各自治体が整備しているため、事前にチェックしてから登山をするなどしましょう。
また、火山から数十キロ以上離れているのであれば、噴火で一番怖いのは「火山灰」です。火山灰が降ると、長期的に経済が麻痺します。具体的には社会基盤(インフラ)がストップしていまいます。
車や電車などの交通機関が麻痺して物流が止まるため、食べ物が止まります。そして、浄水場に火山灰が目詰まりを起こすため、水が止まります。最悪ケースだと電気も止まります。これが回復するのに何か月もかかるため、特に富士山等の噴火が怖いと言われているのです。
大地震は噴火と関係があるのか?
関係がないかあるかと聞かれると「ある」と思われます。
ただ「噴火が起こったから、近くで大地震が起こるかも!やばいやばい!」と慌てふためくのは100%間違いです。
原因と結果を捉え間違えています。「地殻変動が起きているから、噴火が起こっている」が正しい表現です。噴火自体が大地震を引き起こすトリガーになるかどうかは分かっていませんし、現時点でそういう情報はないようです。無駄に焦るのはやめましょう。
ただ、今現時点で噴火の警戒レベルが上がってきているのであれば、噴火対策グッズを揃えておいてもいいのではないかと思います。
噴火で死なないための個人用防災グッズ
富士山が大噴火したときの対策グッズを下記にまとめていますので、参考にしてください。
マスク、ゴーグル、非常食あたりは買っておいて損はありません。
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